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線路沿いの安アパート
始発の電車が動き始めている。
久しぶりに徹夜で君と語り合った
後2時間後には出勤
踏切の音が聞こえて

2階の角部屋から駅のホームが見えている
手を降る君
テーブルの上には飲みかけのコーヒーカップに
拭い忘れた赤の口紅の後
肩肘ついて君の飲みかけのコーヒー
口に運びながら
ホームに手を振る

今日は大切なクライアントとの商談
けど
昨日の余韻に浸るには
いつもより早い起床はちょうどよい時間だ

ここの二階
上がんなよ、結構ぼろいからうけるよ
って言葉に
すごーい、映画のセットみたい
私こんなとこ住みたかったんだ
って
まあ、今どきはそうかも
お金なしに家飛び出して上京したご褒美が今頃


酔ったでしょ、インスタントしかないけど
コーヒー飲む?お砂糖入れる?milkは?
荷物そこおいていいよ。
上着しわになるからかけとくね。

なんておっさん臭いやさしさ。

しばらくとりとめもないこと。
時間だけは十分にあるから。

 

わたしはわたしを犠牲にしてるんだ
だからわたしでない時間が欲しくなるの

そうなんだ
おれもおれでない時間で生きているよ
結局自分てものわかんないし
っていうか本来自分なんてないかもね

ねえ
人のことって好き?
わたしは人がわからないから

好きだと思うよ
でもそれも演じてる自分にとっては
それすらもほんとはわかんないだけどね

 

そういえば今日会う前に時間あったから
口紅買ったんだ
ほら見て

私口紅って
なんだか違和感あるから塗らなかったんだけど
今日は気分で買っちゃった

ねえ
似合う?

 

女の子って年関係なく
憎たらしいほど愛くるしい

似合うやん
って
動揺隠すよな大人の返答

わたしはさ
この口紅の色みたいに
私も私でなくて

私も演じてるんだったら
見事に鮮やかに惑わしてやりたい

世の中も
男も
..さんも

ねえ

握っていい?

 

 

手を振る君
口をつけたコーヒーカップには
重なりそうなぎりぎりのところにある
拭い忘れた口紅の後

出勤には2時間
昨日かけてた曲リピートさせて
もう少し昨日の余韻

今日の商談はうまくいきそうだ
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被写体
rina 

写真 /文 /Tシャツ
@hagu,umitsuki
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1Room The story of one girl /268

 

 

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