#21 イノセント 2

ある日
転校生がやってきた。
‘みやこちゃん’って女の子。

‘みやこちゃん’が
「明日は誕生日だから、誕生日会をするからきて」
と言った。

はじめてのおともだち。

おかあさんにおこづかいを貰って、プレゼントを買った。

次の日‘みやこちゃん’の家に行って、プレゼントを渡したけれど、誕生日会は無かった。

へんだなぁ~?

思ったけれど、おともだちの誕生日だものね。

うちに帰って
お母さんに
「誕生日会はどうだった?」
って聞かれたから

「楽しかったよ!ケーキも食べたし、美味しかった!」
って笑って言ったんだ。

この時ばかりは何だか心臓がチクチクして
どういう訳だかたった今もチクチクして

後になって
‘みやこちゃん’は本当は‘みやこちゃん’ではなく

‘みわちゃん’で、誕生日は全然違う日だったと知った。

もっと後になって‘みわちゃん’のママはパチンコが好きで、いつも家におらず

‘みわちゃん’のパパはヤクザのひとで、ママがパチンコでいない時は、ママでない女の人が家に来ていたという事も知った。

‘みわちゃん’は嘘つきだから嫌いだったけど、どこかひねくれた所が似ていたあたし達は、親分と子分になった。

あたしが‘子分’だ。

先生がまたあたしを呼び出して
「本当にそのままでいいのか?」
って聞いた。

「‘大丈夫です’」ってきっぱり答えた。

ある日、あたしはお父さんのタバコを盗んだ。
吸いたかったからではない。
お父さんがタバコを吸うのが嫌いだったから。

そのタバコは‘みわちゃん’家に持って行った。
親分だから、‘みわちゃん’にあげたら、吸ってみようと言い出した。

私はただ、ぼんやりと‘その姿’を眺めていただけだった。

最初は咳き込んでいたのに、それ以来、‘みわちゃん’は会う度にタバコを吸う様になった。

私は結局この年まで一度も吸った事がない。

放課後は公衆電話から‘いたずら電話’をして遊んでいたけれど

そのうちにすっかり飽きて‘テレクラ’で遊ぶ様になった。

ただ、待ち合わせに来た‘その人’を遠くから眺めておもしろがっただけだったけど。

テレクラで呼び出した男の人と一度も遊んだ事は無いけれど
中学2年生になって、‘みわちゃん’に子供が出来たと騒ぎになった。

その頃にはすっかり‘みわちゃん’とは疎遠になっていたから、詳しい事は何も知らない。

ただ、二十歳の同窓会に来ていた‘みわちゃん’は「新米ママ」で、歯が何本か無くなっていたのだった。

続く。

写真は
Rumica Sakaguchi

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