撮影 Rulu
その頃‘しのちゃん’という子と親友になっていた。
毎日交換日記をしていたし、休みの度に遊びに行って、クラスの委員も何でも一緒だった。
ところがある日、‘しのちゃん’は何かの病気で2ヶ月も入院した。
私は寂しくて‘しのちゃん’が早く学校に来ないかと毎日待ちわびていたのに
やっと‘しのちゃん’が退院して間もない頃に、私の転校が決まった。
その頃から段々と‘しのちゃん’の様子がおかしくなっていった。
あんまり学校に来なくなって、悪い噂ばかりを聞く様になった。
あんなに仲良しだったのに
結局、最後の日まで‘しのちゃん’は来なかった。
越して来てから一度だけ手紙を送ったけれど、返事は来なかった。
代わりに別の子から、‘しのちゃん’が私から手紙が届いた事や、色々な悪口を嘘ばっかり言っていると聞いた。
けれども、その子だって‘あの頃’は私との交換日記を勝手に見せびらかしていたのだから、本当のところは結局分からないままで
けれども‘しのちゃんの両親が離婚した’という噂は本当の事らしかった。
転校前の最後の日、私は泣き真似をしながら「これまでありがとうございました」とクラスの皆の前で挨拶をして、大学ノートを配った。
それまでの短い人生の中で、あれほど清々しかった事は無い。
‘みわちゃん’が来ていた同窓会に‘しのちゃん’は来なかった。
‘私との交換日記を皆に見せびらかしたあの子’は来ていたけれど、挨拶も交わさないままだった。
だって、「あの頃」嫌いだと言っていた‘気の強い偉そうな女子’と楽しそうにしていたから。
それ以降も本当に色々な経験をした。
が、「時効」で許されるのはこっちに越してくる前の中学2年生の話までだろうと勝手に思っている。
30歳の私は
タバコもギャンブルも、本当の意味での男遊びもした事がないし、お酒も滅多に飲まない。
「人生とは‘刹那’の繰り返し」
いつだって誰も悪くない。
なるべくして、そうなっただけ。
最後に…
この話はフィクションかもしれないし、ノンフィクションかもしれない。
本当の事は「私」しか知らないのだから。
【イノセント 完】
ここまでが約10年前に書いたもの。
次回は完結編。
「30年後のイノセント」
をお送りします。