霧雨は朝、小雨へと変わる。
-ハルセト03 「#はる」 –
「..651..652…..」
コンビニまで偶然にも999歩
家まであとちょっと
毎朝恒例の
クリームパン、低脂肪牛乳
その前の野菜ジュース
今日はついてる。
だって大好きな雨
うん、雨。
ビニール傘にあたる雨粒が
くるくるって傘回すたび
踊りだす。
「713..714….」
あっ、行きの酔っぱらいの人
まだいるんだ。
髪の毛に雨かかってくしゅくしゅしてる
可愛いかも…♪
やばい、あれはきっと行倒れっていうんだ
たぶん、たぶん旅人で旅の途中とか…
いいな~あ..♪
なんて今日はほんとに調子がいい
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ーアスファルトと土の濡れた匂い
肩をたたく雨音ー
泥酔して外で寝ていることに気づく
以外にも心地よいこと。
これまでだと周り気にして
すぐ起き上がってただろうに
まあ、どうでもいいやってなってる
雨音の心地良さに
もう少し寝ていよう
今日の予定も明日もないのだから
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「あのっ」
「あのっ」
「もしもし?」
「もしもーし」
「もしもしって言うんだやっぱりこんな時」
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「パツ.パツ….」
ビニール傘にあたる雨音
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「あのー大丈夫ですか?」
「風邪引きますよ。こんなとこで寝てたら。」
雨の音に交じった柔軟剤の匂い
聞こえる声にうっすらと目を開けると
ピンク色のサンダルに
白い服を着た女の子が
自分の前に座り込んで傘をかけていた。
「飲みすぎたんですか?」
「大丈夫ですか?」
「お腹すいてないですか?」
「あっ、クリームパン食べます?」
「牛乳もありますよ」
「えっ?だれ?」
路上で寝てるやつに声かける奴なんてそうそういない
結構やばい?ひと?
クリームパンって?…….
「なに?…..」
「あの~怪しい人ではないですよ」
「あっ、ちょっとこのままいてくださいね」
ごめんなさい。ちょっといろいろあったんで
君と相手する余裕ないんです
「よいしょ」
「はい、これ」
「ほら、風邪 引いちゃいますよ」
戻ってきた女の子はそう言って
真っ白い大きなバスタオルで
子犬拭くみたいに頭をくるんでくれた。
「うちに来ます?」
「このままここにいると死んじゃいますよ。」
「あっ、大丈夫ですよ。いつも知らない人に声かけてる変な人じゃないですから。それに今日雨の日でしょう。雨の出会いに悪い人はいないんですよ私。」
いやいやありえないでしょう、雨の日にって
「大丈夫です、しばらくしたら起き上がれますから
なんかすいません。こんなとこで……..」
お願いだからほっといてくれよ、今それどころじゃないんだから
「よいしょ、そういうわけにはいかないですよ。ちょっと頑張って立ってください。」
「ほら行きますよ。」
女の子はそういうと瀬人の腕を肩にかけ
歩き出すのだった。