ハルセト 05

ーハルセト05 「#Room 2」ー

 

 

電車の走る音に
窓ガラスが少し揺れている。
子供たちの声
おばさんたちのはなし声

フローリングの匂いに
かすかな柔軟剤

そんな些細なことに
何度も目を覚ましては
また眠りについている

安心できたのっていつぶりなのだろう
思い出せなかった記憶がよみがえったりしていて

学校さぼって家にいるときの
何かを作っている母の後ろ姿に

何かに嫌で逃げだしたときの
それでも許された安心感

あの時に似た……

「あっ、起きました?
着替え買ってきましたよ。
サイズわからなかったのでフリーサイズで。
着替えます?その前に体、拭きましょうね」

 

あっ、大丈夫で…自分でやれます。

「いえいえ、大丈夫ですよ。安心してください。
昔、看護師っていうか…介護で人の体拭いてあげてたことあるので私、上手なんですよ。 今、お湯用意しますね。」

そう言ってお風呂場から持ってきた洗面器にお湯を注ぎ
ひと肌に水を足すと
指先をタオルで包み拭き始めた

熱があるせいか
抵抗できないことと
彼女の躊躇しない手慣れた動作に
なぜか身を任せてしまっている。

「ちょっと手を上げますね…..くすぐったくないですか?….首元拭くのでちょっと上向いてもらって……ええと、ちょっとつまみますね…..よし….すいません.足開いてもらって…….と、後ろ….背中拭くのでうつぶせにしますね。」

「よし、拭き終わりました。着替え着せますね。」

真新しいTシャツとトランクス。
だいぶ風呂に入ってなかったせいもあって
肌触りが心地よい。

「あっ、頭は元気になってからシャワー入って自分で洗ってくださいね」

 

あの、ごめんなさい…ていうか、ありがとうございます。
こんなことまでしてもらって

 

 

そういいながらいつの間にか変えられてる
柔軟剤の香りの真っ白なバスタオルたちにくるまりながら,
また眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

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