Agave

北欧柄の便せんに
「覚えていますか?」から始まる。
過去にしまい込んでいた記憶の欠片

そういえばと
クローゼットにしまい込んでいた
アルバムを引きずり出し
中に挟んでいた
あの頃の手紙を
読みかえしてみた。

形の崩れた落ち葉と
まだきれいなままのかわいらしい言葉たち

アイスクリーム
たこやき
はなび

じかん
やくそく

どれもが
いまでもつかう
見知った言葉なのに

味も
色合いも
今とは違うものに
思える

あの頃にあった
君からもらった
鉢植えの花は
毎年みごとに花を咲かせていたのに

いまベランダに置かれた
鉢植えの草には
もう何年も色を見ていない。

生きていくのに
自分の色を隠して
もう何年も..

そのことと何らかのかかわりが
あることは
うすうすと感じていたりするのだけども

「君は花を今でも
咲かせているのですか?」

そんなふうに考えながら
目の前にあるパソコンに映る自分の
顔を眺めている

 

手紙はアルバムの中に
もう少し
押入れの隅に保管して

ベランダの花が咲くのを
眺めていよう

 

いつか
花が咲いたことを伝えよう

 

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