貪欲に生かされて

生きるということは
生活をするということだ

私は生活に無頓着だ
煙草を吸いお酒を飲み
数日何も食べなくても気にしない
洋服は好きだけどお洒落なんて面倒だ
布団が薄くなって尾骶骨が痛くてなっても横向きに寝ればいい
テレビも10年くらい見てない
昨日から新しいアパートで暮らし始めているが
このアパートに住むことを決めたのも別に内装が好きだったとか職場から近かったからとかではない
単純に好きな人と同じ町に住みたかっただけ。それだけ

その人はとても真面目で誠実で勇敢な人だった
その人と対峙する度に私は自分の不真面目で不誠実で弱いことを恥じた
その人を好きになったときに初めて自分の身体に残っている自傷痕と煙草跡を惨めに感じレーザー治療で綺麗にしたいと思った
今までは誰にどう思われようが見れられようがどうでも良かったのに

私が彼の住んでいる町へ引っ越すと同じタイミングで、すれ違いのようにその人は東京を離れた

磁石は違う極同士だとくっつき、同じ極同士だと反発するのに、
私たちはまるで正反対、違う極同士なのに、
彼が白なら私は黒だ、彼が暑い夏なら私は冷たい冬だ
彼が晴天なら私は曇天だ、彼が正義なら私は悪だ、彼が美なら私は醜だ
彼が滑らかなら私は鋭利だ、彼が充満なら私は枯渇だ、彼が先進なら私は堕落だ、
彼が無限なら私は有限だ、彼が現実なら私は白昼夢だ、彼が永遠なら私は束の間だ、
彼が清々しい朝なら私は寂しい兎が月に浮かんでる夜だ

彼が幸福なら私は不幸だ
彼が不幸なら私は幸福だ

なんて物思いに更けては
この痛みを上手く絵に描けたなら、私は幾許かは…
あまりに生に無頓着な癖にあまりに愛されることに貪欲で
その貪欲さに生かされて救われて
誰かにとっては米粒程度の私にとってはとてもとても重い貪欲を背負って

生きるということは
生活することだ

この町のこの部屋は私一人には少し広すぎるなぁ、そう感じた

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